判例を解説する前に、そもそも憲法とは何なのかという点についてお話します。
もともと憲法の「憲」という字には、「一番もとになる法」という意味があります。
そこから分かる通り、憲法とは簡単に言って「国家の基本的ルールを定めたもの」です。
少し細かい話になりますが、「憲法」という概念は、使われ方によって『固有の意味における憲法』と『近代的意味における憲法』の2つに分類されます。
「国家の基本的なルールを定めたもの」という意味で「憲法」という言葉を使った場合、それは『固有の意味における憲法』です。
それに対して、『近代的意味における憲法』は、基本的ルールを定めるだけではなく、人権を国家に先立つものとして確認した憲法のことを指します。
1789年のフランス人権宣言16条は、「権利の保障が確立されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない」と規定していますが、ここで使われている「憲法」という言葉は、『近代的意味における憲法』です。
大日本帝国憲法は「憲法」という文字が入っていますが、フランス人権宣言16条の主旨とはかけ離れたものであり、『近代的意味における憲法』ではありません。
では次に、憲法の特徴についてお話します。
憲法には次の3つの特徴があります。
1.憲法には自らの力で別の法規範(ex.法律)を作り出す能力がある
2.憲法の内容に反する法規範は許されない
3.憲法はすべての法規範の頂点に立つ
日本国憲法98条は、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定しています。
これは、上記の特徴を確認した条文です。
また、日本国憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定しており、為政者は憲法の擁護義務を負っています。
リンク: 条文「日本国憲法」
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