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債権回収業者からの訴え取り下げについて思うこと

 

債権回収代行業者は「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」に基づいて債権回収を行っているが、消滅時効が完成した債権の譲渡または回収委託を受けて、支払督促や訴訟による取り立てをすることも多い。

 

そのような場合、訴訟上で消滅時効の援用をすれば、通常は債権回収代行業者が訴えを取り下げる。

 

事業者・個人間の債権は基本的に5年で消滅時効が完成するため、その後「時効の援用」をすることによって法的に支払い義務がなくなるためである。

 

ところで、答弁書が提出された後に訴えを取り下げる場合には被告の同意が必要となる(民訴法261条)。

これは、何度も同じ訴訟を起こされることによって被告が不利益を受けることを防ぐためだ。

例えば、取下げ後に再度債権譲渡がされ、別の業者からまた訴訟を起こされるということも理論上はあり得るため、一度で済ませるために、被告としては取り下げに同意せず請求棄却判決を取るという選択も考えられる。

 

前置きが長くなったが、問題は、事実上、被告の同意なく取り下げを認める扱いがされているということだ。

 

具体的には、督促異議申立てにより訴訟に移行し、時効援用をする旨の答弁書を提出後に取り下げがなされた事案で、原告が補正に応じないからという理由で、事実上被告の同意を得ることなく取り下げが認められている。

 

裁判所からすれば、補正に応じない場合、どちらにせよ訴え却下をすることになるからということかもしれないが、法律上の手続きに則っていない。

また、裁判所のそのような対応を前提にして債権回収代行業者は支払督促を利用していると思われる。

 

現実の問題として実害は生じていないのかもしれないが、問題になり得る点である。

 

 

・NHK受信料の時効援用

消滅時効に関連して、現在、時効が完成しているNHK受信料の請求がなされている。

5年以上前の料金は時効援用により支払う必要がなくなるケースが多いと思われる。